殺人を追憶・・・。

stargherking2005-05-19

4月2日、第264代ローマ教皇ヨハネパウロ2世が逝去しました(26年の在位でした)・・・。

このローマ教皇の一人が亡くなると言うNEWSを観た後、最近あまり観ていなかった泣かせる作品というか色々物事を考えさせられる作品が観たいと思い、
ミスティック・リバー」、「21g」、「オールドボーイ」、「パッション」、「殺人の追憶」、という風に観てきました。この「殺人の追憶」が「とり」になります・・・。

1986年から、ソウル近郊の農村(ファソン)で起きた連続殺人事件(連続猟奇殺人事件)。6年間で10人の女性が殺されていながら、未だに容疑者は見つかっていないという・・・。事件を再現した演劇は再演を繰り返し、そこから今回の映画が生まれたという。事件は8人目までの時点で既に時効を迎えているとの事です。

この作品の凄さは『始まり』と『終わり』である。
のどかな農村地帯の田園風景、金色(黄金色)の稲穂が頭を垂れている。
その風景をかき消す様に「殺人」の「追想」は始っていく。
そして始まりと同じ、のどかな農村地帯の田園風景が物語を終末に導く・・・。
「事件」の解決(終結)には至ら無いのだが「作品」(映画)の終結には到達するのである・・・。

『始まり』の田園風景はミレー(ジャン=フランソワ)の『晩鐘』の様だが、
『終わり』の田園風景はゴッホ(ヴィンセント・ヴァン)の『烏のいる麦畑』(カラスの群れ飛ぶ麦畑)の様に思える・・・。
冥界の暗さを予感させる、青よりも黒と言ってしまって良いような空、強烈なタッチでざわめく金色(黄金色)の麦畑と赤い道・・。空には死の象徴であるカラス(烏)が群れをなして飛び交い、死の翼を降ろそうと狙っている。
ゴッホの無意識的な遺書的作品と言える作品が、この『烏のいる麦畑』である。
「死は悲しいものではない」、「死は純金の光にあふれた太陽とともに、明るい光の中で事が行われる」と彼(ゴッホ)は弟テオへの手紙で語っています。夏の盛りの日曜日は、太古から太陽を崇拝する日と定められた日である。その日に彼(ゴッホ)は自らに向けてピストルの引き金を引いてしまったのです・・・。

最後のトゥマン役のソン・ガンホの「顔」(表情)がなんとも言えません(涙)・・・。
『殺人を追憶』した犯人は自分が【生きる屍】そのものになった事を後悔(懺悔)したのではないだろうか?・・・。
「川」に始った、私の瞑想(迷走)は「麦畑」で終わる(終結)事になりました・・・。