リアリティとリアリズム・・・。

stargherking2006-05-09

筒井康隆】のエッセイ集『笑犬楼の逆襲』(新潮社)の中のタイトルの一つに『リアリティリアリズムではない』というのがありました・・・。精神分析学的に言うと「リアルリアリティではない」となるらしいのです・・・、現実そのものを全て同時に把握するのは人間の心では不可能であるというのですが・・・。

最近「西部劇」に嵌っていると書いてから大分経つのですが、アメリカ独立戦争を中心に展開していく【メル・ギブソン】主演の『パトリオット』を基点に、今まで観た色々な「西部劇(広義的な?)」作品を中心に18世紀後半から19世紀後半の事柄(事象)を「大雑把」に考えると、「アメリカ独立戦争(1775年〜1783年)」→「ナポレオン戦争(1803年〜1815年)」→「アラモの戦い(1836年2月23日〜3月6日)」→「阿片戦争1840年〜1842年)」→「クリミア戦争1854年〜1856年)」→「南北戦争1861年〜1865年)」→「明治維新(1868年10月23日【旧9月8日】)」という具合になりますね・・・。

少し前に「ナポレオン戦争」時代を舞台にした作品『マスター・アンド・コマンダー』を観ましたが思っていたより凄い作品で感動しました。この『マスター・アンド・コマンダー』の主人公【ジャック・オーブリー】はイギリス海軍の艦長ですが、同じシチュエーションの作品でイギリスのTVドラマ『ホーンブロワー』というのもありますね、同じイギリスのTVドラマでイギリス陸軍所属の【リチャード・シャープ】を主人公とした『炎の英雄 リチャード・シャープ』というのもあるのですが、どちらの作品も未だ観ていません・・・。

アメリカ独立戦争パトリオット)」→「ナポレオン戦争マスター・アンド・コマンダー)」→「アラモの戦い(アラモ)」と来たので、遂に『ラストサムライ』を観る事にしました・・・。『ラストサムライ』は「南北戦争(1961年〜1965年)」の少し後である「明治9年【1876年】」より始まるのですが、冒頭で主人公の【トム・クルーズ】演ずる【ネイサン・オールグレン大尉】はウィンチェスター社の宣伝マンでウィンチェスターのレバーアクションライフル【M73】のデモンストレーションをしているのが面白い所です・・・。【オールグレン大尉】といっしょに海を渡って日本に来る事になるのが【ゼブロン・ガント軍曹】ですが、この役を演ずるのが『処刑人』の殺し屋【イル・ドゥーチェ】である【ビリー・コノリー】だったのには驚きました・・・。因みに日本で【オールグレン】達の案内役である【サイモン・グレアム】役は『ハリーポッター』で有名な【ティモシー・スポール】でした。途中でネズミに変身するのかと思いました(笑)・・・。

この『ラストサムライ』ですが「時代公証」や「武士道」の表現(体現)の仕方には色々と問題点はあるのでしょうが、なかなか面白い作品だと思いました。【トム・クルーズ】に「ボブ」というニックネームを付けられた「寡黙なサムライ」役の【福本清三】が一番光ってましたね(涙)。彼は常に右手に「」を携えて黙々と立っているのですが、主君である【勝元】の緊急時には左手に「」を携えて跳んでくるという所は見事ですね(右手で携えるというのは敵意が無いという意味であり、左手で携えるというのはその逆の状況を表しているので)。【中尾】役の【菅田俊】が【トム・クルーズ】に膝十字固めを掛ける所もなかな面白い所です(元々の柔術には足関節を極める技があったというのですが・・・、竹内流小具足術でしょうか?・・・)。また「太刀」と「打刀」での差し方が違うのも面白いですね(「太刀」は刃を下に、「打刀」は刃を上に差していました・・・)。

日本流で言う所の《殺陣》が見事な作品です。《殺陣》に関しては日本人の専門家(武道家)も関係しているとの事ですが、「アクション監督」は『ブレイブハート(1995年)』や『グラディエーター(2000年)』の【ニック・ポール】です(注:他に主に制作で同名の人が居る様です)。この人ですが『ボーン・アイデンティティ』の「アクション監督」でもあった様です(『ボーン・スプレマシー』は違う人だった様です。前作に比べて「キレ」の無いアクションに思えた原因は「アクション監督」が違う事が原因だったのでしょうね)。

リアリズム》という点に関しては問題点が多い作品だと思いますが、《リアリティ》という点に関しては優れた作品であったと思います。154分という時間が瞬く間に過ぎ去り、もっと観たかったと思える上質な作品でした・・・。