THE MAN WHO WASN’T THERE・・・。

stargherking2005-11-30

コーエン兄弟の作品『バーバー』(2001年)を観ました・・・。最初から最後まで何故か「涙目」状態で観てました・・・。今年(2005年)観た映画の中では「BEST1」の作品ですね(因みに次点はガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』です)。

日本では2002年に公開された作品で、カンヌ出展時や劇場公開では「モノクロ」で公開されていた作品です。私は思う事あって「カラー版」を先に観る事にしました。この作品ですが元々「カラー」フィルムで撮影して「モノクロ」フィルムに焼き付けられ特別処理という風に作成した様です・・・。

「邦題」では『バーバー』というタイトルなんですが、「原題」は【THE MAN WHO WASN'T THERE】で直訳すると「そこにいなかった男」という事になります。
因みに「フランス語版」のタイトルは『L'UOMO CHE NON C'ERA』、「スペイン語版」のタイトルは『EL HOMBRE QUE NUNCA ESTUVO ALLI』という風になっています。「フランス語版」と「スペイン語版」は「英語版」のタイトル『THE MAN WHO WASN'T THERE』を、そのまま自国語に訳したタイトルですね・・・。(「フランス語」での『UOMO』、「スペイン語」での『HOMBRE』は、どちらも「男、奴」を意味する言葉です)

舞台は1949年のカルフォルニア州サンタ・ローザ、無口な主人公の「語り」でストーリーは進んでいきます。前半はジム・ジャームッシュの映画のように思えましたが、だんだんとコーエン節が炸裂してきますね。1940年代のアメリカの「キーワード」が色々散りばめられ「シニカルさ」と「コミカルさ」が巧みに絡まりあっているストーリーは「悲劇的な喜劇」というか「喜劇的な悲劇」というか・・・。

不思議な事に、この『バーバー』と『エレファント』の双方でベートーベンのピアノ・ソナタが印象深い使われ方をしています。『バーバー』は主に「悲愴」で他に「熱情」や「月光」等も使われています。『エレファント』では「月光」が印象的でした・・・。

観終わって「原題」の意味を考えてみると、この作品の「根底」にあるものはルイ・マル監督の『鬼火』と同じものなのではないのか?と思いました・・・。主人公が時々使う言い回しである「アウトサイダー」という言葉は「そこにいなかった男」という「原題」の意味を表している言葉でもあるように思えます・・・。
「鬼火」とは「この世」に未練のある「死んだ人」の「魂」の姿であるという風に言われています。「そこ」(この世)にはいない「彼ら」は本来の居場所である「あの世」に戻る事に・・・。「あの世」の「太陽」も『黄色い』のでしょうか?・・・。

この『バーバー』ですが「煙草」が印象的な作品ですね・・・。「モノクロ版」もそのうちゆっくり観てみたいです・・・。