悪いやつほどよく眠る・・・。

stargherking2005-03-15

私は1920年代から1930年代のマフィア(ギャング)映画が大好きです。
元々前から観たかったんですが、観るのが勿体無くて観て無い作品のウォルター・ヒル監督、ブルース・ウィルス主演の「ラストマン・スタンディング」(1996年公開作品)を観ました。
少し前に「ロード・トゥ・パーディション」を観たので、無性に観たくなって観てしまいました。
ラストマン・スタンディング」は黒澤明の「用心棒」のリメイクという事ですが、この「用心棒」に影響された(元にした)映画には「荒野の用心棒」もありますね。
そもそも「用心棒」自体はダシール・ハメットの「血の収穫」が元になっているというのですが、この1929年に発表された「血の収穫」はコンチネンタル・オプという私立探偵が主人公の初長編で、元々このコンチネンタル・オプが主人公の短編がいくつかあります。ダシール・ハメットが次の年の1930年に「マルタの鷹」を発表するとコンチネンタル・オプは姿を消してしまいます。私としては「ラストマン・スタンディング」の主人公ジョン・スミスと名乗る男は実はコンチネンタル・オプなのでは?という「含み」がある様に感じました。

この作品では主人公のジョン・スミス演じるブルース・ウィリス(ウィルス)がガバメントの二挺拳銃というのが堪らなく良いですね(涙)・・・・。現代ではガバメントというと〈M1911A1〉という呼び名が一般的ですが、この俗に言うガバメントという銃はは1911年に造られ当初は〈COLT-M1911〉という名称等で呼ばれていた様です。〈COLT-M1911A1〉は1926年に造られた〈M1911〉の発展型の名称です。
ガバメントが印象的な作品の一つとしてサム・ペキンパーの「ワイルド・バンチ」を思い出します。「ワイルド・バンチ」は舞台が1913年という設定なので〈M1911〉、「ラストマン・スタンディング」は1930年代なので〈M1911A1〉という事になる様です。敵役のクリストファー・ウォーケンのトミーガンぶっ放しも凄く良いです・・・。
そういえばブルース・ウィリスなんですが、「ダイハード」ではマクレーン(イギリス英語的にはマクリーン)という名前の役なんでアイルランド系だと思ってたんですが出身が西ドイツという事でドイツ系なんですね。考えてみるとアイリシュ系ならアイリシュ・マフィア側に同じ移民だから加勢しろとか言われてるだろうし・・・。

ジョン・スミスが東部から西部に来たという設定が、「ダイハード」を彷彿させるのも面白い所です。
ロード・トゥ・パーディション」は1931年が舞台ですが、この「ラストマン・スタンディング」も1930年代(何年という設定は無い様です)が舞台という事で両方とも同じ時代が舞台となっています。
1930年代というと【禁酒法】の真っ只中です。【禁酒法】はアメリカの一部の州では19世紀末から20世紀初頭まで実施されていた様で、その理由もアメリカ殖民の清教徒派の影響があったというのと、その頃のアメリカで酒造・酒販業界を牛耳っていたドイツ系に反発する事で当時勃発した第一次大戦アメリカの参戦を促すという理由等もあった様です。
アメリカ全土で【禁酒法】が施行されたのは【1920年から1933年】の13年10ヶ月の期間となっています。
それと「ロード・トゥ・パーディション」の舞台は1931年の「冬」なんですが、この「冬」というのが重要で、この1931年というのは【禁酒法】の時代に「暗黒街の帝王」と呼ばれた『アル・カポネ』が脱税で検挙された年なんです。『アル・カポネ』が脱税容疑で告発されたのが7月ということで、そのすぐ後という設定になっています。「ロード・トゥ・パーディション」の舞台は【帝王カポネ】がいないギャンング界(シカゴ)という事が重要な要素になっているものと思います。
ラストマン・スタンディング」の舞台は1930年代となっていますが、まだ【禁酒法】の時代という設定なので1930年から1933年の間の話という事になります。
ロード・トゥ・パーディション」はイリノイ州のロックアイランドにある街で起こったアイリッシュ・マフィアの内部抗争というか内部の敵討ちの話という事になるのですが、「ラストマン・スタンディング」はメキシコ近くのテキサス州ジェリコという街でのアイリシュ・マフィアとイタリアン・マフィアの抗争の渦中に飛び込んだジョン・スミス(仮名)という男を中心とした話となっています。
そもそも「マフィア【Mafia】」とはシチリア移民の組織の名称なんですが犯罪組織の通称として一般に使われます。
「バラキ」(リノ・バンチュラ、チャールズ・ブロンソン出演)とか「コーザ・ノストラ」(1973年作品ジャン・マリア・ヴォロンテ主演)とかを観ると、一般的に「イタリア」系といわれる人達が「シチリア」系と「ナポリ」系に分かれているのが表されています。
19世紀にイタリア統一を目指す《ガリバルディ》率いる「赤シャツ隊」が両シチリア王国シチリア王国ナポリ王国が合併して出来た国家)を征服して統一イタリアを興します。
この統一イタリアに賛同しない両シチリア王国の人達がアメリカに移民してきたので、19世紀末から20世紀初頭のアメリカのイタリア移民というのはシチリア系とナポリ系が大半をしめる事になっている様です。
1920年シチリア系(マフィア)とナポリ系のギャングの抗争を終結させようとして造ったイタリア人の統一組織が「COSA NOSTRA」という事になっています・・・。